A級達のあこがれ『元名人位』

俺の通っていたビリヤード場にはプロと、もう一人強烈な人がいた。

この人は元名人といって、アマチュアの試合で一番難しいと言われている名人戦で全国の頂点に立ったことのある人。

もうそれは言葉では言い表せないくらいの技術の持ち主で、トッププロの高橋邦彦プロや川端聡プロも一目置くような存在の人で、『やっぱりかなわんわ』と二人が口に出すくらいやった。

見た目はヤクザやったけど(笑)中身は物凄く良い人で、純粋にビリヤードが一番好きやなって伝わってくるような感じで、よく店に出入りしている当時ドB級の俺にも声をかけてくれることがあってむっちゃ嬉しかったわ。

『自分、結構うまいやん！』って言ってくれるけど、こっちはそれはもう恥ずかしくて仕方なかった。

こんなレベルのビリヤードを見ないでくださいって感じ。恥ずかしいけど嬉しいって女子か！みたいな感覚やったけど、日が経つにつれてこの元名人のすごさが徐々に解って来ることになるねん。

俺の最初のビリヤードのおっちゃん師匠が『元名人に声かけてもらえるなんておまえすごいぞ』って。

そんなん、だた冗談で声かけられただけで、特に意味なんてないしと思っていたけど、これをきっかけに顔と名前をインプットされたようや。

店のみんな、いや県全体の人が元名人のビリヤードに憧れ、その技術をリアルタイムで見れたということは今でも宝モノになっている。

あんな玉突きするアマチュア、いやプロでさえも見たことないし、これからも見ることは無いと思う。

この元名人もこれまた俺がA級になるための大きなターニングポイントを提供してくれる人物やった。